誰でも人生で「諦める」ときが来ます。
- 仕事を辞めるとき
- もっと先の人生でも
大きな転機のこともあるでしょうし、ささいな日常生活でも人は取捨選択しています。
そんな人生の転機が来た時、天災に遭遇したときにどう考え、乗り越えていったらいいでしょうか?
もちろんその時々の苦しい時に考える必要はあるでしょう。
陸上競技で25年にわたりトップアスリートとして活躍した選手生活を引退し、引退後もスポーツを介して教育や社会に関わり続けている
- 為末大さんの著書『諦める力』
をご紹介します。
常にトップレベルで活躍した為末さんは
陸上競技を続け、引退する過程で、
- 自分の人生を大切にするために必要な「諦める力」を使います。
- 「諦め」はネガティブにとらえられますが、前向きな「諦める力」が必要だと教えてくれます。
これからの人生を考えるときに是非とも読みたい本です!
著者のプロフィール
著者:為末 大(ためすえだい)
400mハードル日本記録保持者
- 株式会社 侍 代表取締役
- 株式会社 R.project 取締役
- 為末大学 Tamesue Academy(https://www.youtube.com/c/TamesueAcademy/videos)
などを通じて、スポーツと社会、教育についての活動を行っています。
- 2001年エドモントン世界選手権、2005年ヘルシンキ世界選手権で男子400mハードルで銅メダル
- 2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京オリンピック出場
- 2003年 大阪ガスを退社しプロの陸上選手になる
- 2006年 クイズ$ミリオネアで1000万円を獲得
- 2012年 日本選手権男子400m障害を最後に現役生活を引退
- 170cmという一般的な日本人の体格でもこれだけ長年にわたり陸上競技で第一線を走り続けた為末大さん。
- 引退後もスポーツを介して社会や教育に関わり続けています。
本の概要
陸上競技にひたすらに取り組み、日本でトップレベルを長年維持し、世界に挑戦し「上には上がいる」ことを自覚しつつ25年間、選手生活をつづけました。
その中で諦める力が必要なことを実感し実践してきました。
「自分が勝てるフィールド」を選ぶ、という「諦める力」
為末さんはいわゆる花形の競技である100m走ではなくハードル走を選ぶことで、いまだに破られていない日本記録を樹立し、25年にわたってトップレベルで走り続けました。
当初、中学生までは100m走でトップレベルでした。
早熟で周囲に比べて早期に体格が大きかったものの、中学3年生以降は自分の体格は大きくなりませんでした。
遅れて体格が成長したライバル選手は、めきめきと頭角を現しはじめます。
為末さんは「いずれ自分が抜かれる」と考えました。
そして最終的に競合が多く厳しい身体能力が常に要求される100m走という領域をやめて、400mハードルに移りました。
- これは一種の「諦め」かもしれませんが、目的は勝負で勝つこと。
- 100m走か400mハードルかということは手段にすぎません。
100m走を「諦めた」ととらえられるかもしれませんが、目的が何かということを考えて選択した結果です。
- 「諦める力」=「勝ちやすいところ(領域)を見極める力」
とも言えます。
選手生活を終えるときの「諦める力」
為末さんは周囲に惜しまれつつ25年間の選手生活を終わりにすると自分で決めます。
引退する時にも為末さんは自分で決断し、その時に「諦める力」が大事だと考えます。
やめる時期をもう少し、もう少しと伸ばした結果、
- 就職するタイミングを逃して生活が立ち行かなくなる
- 結婚を約束した相手から逃げられる
など、人生がくるってしまった選手は周囲に数多くいたそうです。
さらに
- 「諦めないでがんばって」と応援する人々
- 「ここまでやってきたのだから」という自分の思い
人生が狂うことを承知の上で引退する時期を先延ばしにしているのであればいいのですが、そんなアスリートは少ないのです。
さらに引退後に解説者や指導者としての道がありますが、そのポジションを得るのは難しい。
とすると選手生活をやめると、これまでほぼスポーツ中心の生活でしたから、一般社会にでても苦労することが多いし生活がままならないことになります。
つまり「引退する」という選択を人任せにしたり、自分できちんと考えないと、自分にツケが回ってくる。
そして本文中にでてきますが、「鹿はいくら犬になりたいと思って努力を継続しても決して鹿は犬になることはできません」。
自分できちんと考え選択する必要がありますが、
- 人生の中で「引退するという道を選ぶ(決心する)」ということも「諦める力」であり、必要な諦めです。
「諦める」の語源
- 諦めるの「諦」には「断念する」以外にも、「明らかにする」、「さとり」の意味があるそうです。
- また「諦める」という語源は「明らめる」だそうです。
いつから「明らめる」が「諦める」に変わったかは分かりません。
でも、為末さんが考える「諦める力」というのは、"人生で大事なことを自分で明らかにして選ぶ”ということなのかもしれません。
なかなか難しい時もありますが、それでも自分の人生のためにはしなくてはならない選択です。
勉強になったポイント
今回ご紹介した本「諦める力」には、人生で考えなければならないいくつものエッセンスが詰まっています。
- 勝負をするなら自分が勝てるフィールドで勝負する。
- 「今」自分に大事なことを選択する力、つまり「エッセンシャル思考」の大切さ。そしてそこでは、他の人の評価を気にしすぎない。自分の人生を選ぶという「嫌われる勇気」の必要性。
- 卵は一つのかごに盛るな。
- 人生は最高の暇つぶし。自分が興味ある事、楽しいことに挑戦する。
自分が勝てるフィールドで勝負する
自分が勝てるフィールドで勝負するときに、為末さんは400mハードル走を選びます。
そしてそんなメジャーな領域で日本一になっても何れ身体能力が落ちるに伴い、すぐに追いかける人が現れ、そして追い抜いていくでしょう。
でも、堀江貴文さんの『多動力』で紹介されていたように、トップクラスではなくても100人の中で1番になれるくらいの「肩書」と言えるくらいの能力をいくつか持つことで、100万人に1人の存在になれます。
つまりほどほどであってもいくつかの得意分野を併せ持つことで、自分が勝てるフィールドを持ったり造ったりできるのではないでしょうか。
そうすることで自分が勝てるフィールドで勝負することができます。
-
【100万人に1人の存在に!】楽しんでレアな存在になるための本『多動力』
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「エッセンシャル思考」と「嫌われる勇気」
- 今の自分にとって大事なことは何かということを考える(「エッセンシャル思考」)。大事なこと以外は極力そぎ落とす。
- そのためには、周囲の人の評価を気にしすぎないで、自分本位で考える(「嫌われる勇気」)。
- なんとなく考える
- 周囲の人に好かれようと思って自分の考えを後回しにする
とついついしてしまいがちな行動は、有意義な自分の人生を送るのには逆効果です。
卵は一つのかごに盛るな
「卵は一つのかごに盛るな」とは、金融の世界で
- 卵を一つのかごに盛ってしまうと、過誤を落としたら卵は全部割れてしまう。
- そうではなくて、いくつかのかごに分けて盛れば被害は最小限に済む。
ということです。
例えば陸上競技のみに人生をかけて、退路を断つということは、まるで、卵を1つのかごに高く積み上げていく状態です。
リスクを常に考え、被害が最小限になるように、リスクを分散させる心構えが大事なのでしょう。
人生は最高の暇つぶし
住職であり作家である今東光さんが「人生は何か」という問いにたいして「人生は最高の暇つぶし」と答えたそうです。
それなら、
いろんな面白いことに挑戦して、楽しい人生にしたいですね。
また為末さんは「陸上なんか、いつだってやめていい」と母親に言われてきたそうです。
平凡な人生でもいいから元気でいてくれたらいいという無償の愛の言葉だと思います。
そう考えると、
「世界で自分にしかできないこと」ということは世の中にほとんどありませんが、大事な家族のために何かすること、存在することなのかもしれません。
この著者の他の作品
さいごに
為末大さんの著書『諦める力』をご紹介しました。
「諦める」というのはネガティブに聞こえますが、
- 「諦める力」は前向きに人生を生きる上で必要な力です。
そしてこの本では為末さんが自分の陸上選手人生を介して、人生で大事なことをいくつも教えてくれます。
自分で考えて行動するポジティブな「諦める力」を発揮して、有意義な人生にしたいですね。
この記事がみなさんに少しでもお役に立てるとうれしいです。