医師として働くために、心電図検査は重要なはじめの一歩です。
循環器内科医としてはもちろん、それ以外の内科医も普通に利用します。
外科系でも、耳鼻科、眼科含めて、術前心電図検査しますよね。
私の学生時代は、心電図が重要と分かっていても、なかなか心電図波形を読影できませんでした。
研修医1年目は、心電図のコンピューター自動診断機能に完全に頼っていました。
心の中では心電図読影は重要だと分かっている反面、なかなか心電図を自分で判読することができずに、このギャップに悩んで、どうにかしたいと思って過ごしました。
心電図の読影と一口にいっても、なんだかぼんやりしていてわかりにくいですよね。
そして、研修医時代をはじめたくさんの心電図の教科書、参考書を買い込んできました。
結局分かったのは、「心電図読影はパターン認識」です。
心電図の教科書に書いてある、生理学的な機序から理解する必要はありません。
それはずーっと後に回して大丈夫。
「低カリウム血症の時なら、この心電図波形」
「ブルガダ症候群では、この心電図波形」
といったパターン認識が最優先!
ココがポイント
心電図読影は、パターン認識
心電図の教科書に書いてある生理学的な機序を理解することは、後回し
心筋細胞のナトリウムチャネルが最初に働いて、カルシウムイオンが・・・の結果、心電図波形ができる・・・という機序は、臨床で用いる心電図検査の判読では理解する必要はありません。
日常の病棟で、普通に出会った心電図を、一般的なレベルで自分で判断できる、そして心電図所見を列挙できることを最優先して、心電図の本をこれからご紹介します。
あれこれ悩んで、いろんな本を買うよりも、ここでコスパに優れる本だと思いますよ。
こんな方におすすめ
- 研修医
- 循環器に関心がある医師
- 心電図を普通のレベルで読影できるようになりたい医師や医学生
TOP 5
3秒で心電図を読む本
著者:山下 武志
出版社:メディカルサイエンス社
ココがポイント
心電図を読む必要があるすべての人に
普通の12誘導心電図を、時間をかけないで普通に読みたい人に
短時間で「通読」するための本です
心電図を理解する登竜門です
通読しても1日で簡単に読み終わることができます。
読み終わったら心電図を3秒とはいかないまでも、短時間で読むことができそうな気持になります。
それはなぜでしょうか?
12誘導心電図を記録すると、一人につき12個の心電図波形が並んで記録されます。
循環器の医師は、12個、一つ一つ、PQ時間は0.16秒で、異常Q波はなくて、R波の電位は3.5 mVで・・・と読んでいるのでしょうか?
そんなことはありません。
そんなことをしていたら、日が暮れてしまいます。
この本では、短時間(3秒)で心電図を読影するためには、どの順番で12個の心電図波形を読むといいかについて、その根拠も含めて説明されています。
また、あくまでも心電図は万能ではなく、その限界があると割り切っています。スクリーニング検査として、病棟の心電図を機械的に読むことを目的としています。
実際に、研修医の先生がこの本を見ながら実際の心電図を短時間で読んでいましたし、評判も良かったですよ。
心電図のみかた、考え方 基礎編
著者:杉山裕章
出版社:中外医学社
ココがポイント
3秒で心電図を読む本が分かったら、次に読む本
実際の心電図を読むのと並行して利用する
数日くらいかけてもいいので、通読する
3秒で心電図を読む本を読み切ったら、実際の心電図記録を読んでいきます。
それと並行して、数日は時間をかけてもいいので通読すべき本です。
この本を読むと、生理学的な説明が少し出てきますが、あくまでも心電図を読むうえで理解が必要なところだけです。
この本を読んでいくと、実際の心電図を読むときに、3秒で心電図を読む本に肉付けの知識がついてきて、心電図についての知識や根拠の引き出しができてきます。
それに、実際に私が心電図を指導医に教えてもらった内容ととても似ていますので、実践向きです。
実際に心電図を読むときのニュアンスが身につきます。
心電図のみかた、考え方 応用編
著者:杉山裕章
出版社:中外医学社
ココがポイント
心電図のみかた、考え方の基礎編を読み終わったら読む本
できたら通読
上の、基礎編を読み終わったら、応用編を読むとさらに心電図読影に深みが増します。
あくまでも基礎編を優先して読んで、余裕があったら応用編も通読するという順番でいいですよ。
ポイント
これまでの3冊はとてもお勧めできる本ですし、
最初に通読をお勧めします。
心電図の読み方パーフェクトマニュアル
著者:渡辺 重行、山口 巖
出版社:羊土社
ココがポイント
通読せず、辞書的に調べる本です
参照する本としてとてもお勧めで、1冊持っていた方がいいでしょう
これはあくまでも辞書的に調べる本です。
通読する本ではありません。
わからない所見は波形があったときに、該当する箇所を読めば大丈夫。
例えば、心電図でみられた異常所見を判断するうえでの根拠を確認したり。
と言っても、辞書的に参照する本としてはとてもお勧めなので、手元に1冊持っておいた方がいいでしょう。
Chou's Electrocardiography in Clinical Practice: Adult and Pediatric
著者:Borys Surawicz, MD, MACC, Timothy Knilans, MD
出版社:Saunders
ココがポイント
洋書です
英語のためとっつきにくいですが、難しい英語では書かれていません
実際の心電図を見て、上で紹介した本で自分の悩みが解決しないときにとてもお世話になります
本当は上のTOP 4までで十分かもと思いましたが、個人的には、「悩みを解決してくれる本」としてTOP 5に含めました
これもあくまでも辞書的に調べる本です。
心電図の読み方パーフェクトマニュアルでわからないところを、辞書的に調べるときに使います。
個人的には最近もわかりにくい時や、マニアックな心電図の用語や所見が出てきたときには時々お世話になる本です。
個人的には、これも手元に1冊持っておきたい本です。
でも、上記の本が最優先でしょう。
ポイント
ここまでがTOP 5です
3秒で心電図を読む本、心電図のみかた、考え方の基礎編と応用編の3冊
心電図パーフェクトマニュアル
の4冊セットはとてもお勧め。
これで物足りない時は、Chou's Electrocardiography in Clinical Practice: Adult and Pediatricを
一般的な12誘導心電図を機械的に読むのは上記の5冊で十分。
24時間心電図やペースメーカーの不整脈を診るときには、何を診るかという目的が違います。
これらの検査や治療に携わるときには、上記5冊に加えて下の3冊がおすすめです!
24時間心電図を読影するとき
個人授業心電図・不整脈-ホルター心電図でひもとく循環器診療
著者:杉山 裕章
出版社:医学書院
ココがポイント
24時間心電図を読影する、または検査結果を判断するときに「通読する」本
24時間心電図読影の教科書!
これは24時間心電図(ホルター心電図)を読むための教科書です。
上記の12誘導心電図のおすすめの本を読んだうえで、24時間心電図を読むときに通読する本です。
24時間心電図では主に不整脈の検査をするときに、基本的な検査です。夜間を含めて心電図波形を確認できますから、不整脈が1日でどれくらい出ているか、危険な不整脈が出ていないか(例えば、発作性心房細動が出ていないか)がわかります。
付随して虚血の評価にも使うことがあります。
心電図でみられる不整脈についてもっと知りたい
24時間心電図を読影する必要がある循環器内科に興味がある
24時間心電図の読影レポートをみたけれど、注意が必要なのかわからない、知りたい
病棟のモニター心電図でアラームが鳴っているけど、よくわからない
というときにはとてもお勧めできる本です。
24時間心電図をオーダーしたり、読影しない場合や、モニター心電図を見る必要がない場合には、読まなくてもいいでしょう。
ペースメーカーを扱うとき
個人授業 心臓ペースメーカー
著者:杉山 裕章
出版社:医学書院
ココがポイント
ペースメーカーを植え込んでいる患者の診療をするときに、「通読する」本
ペースメーカーについて理解するときには、まずこの本!
心電図の中でも不整脈、そして不整脈の中でも特にペースメーカーの患者を診る必要があるときに読む本です。
ペースメーカーを植えこんでいる場合には、ペースメーカー独特の不整脈が見られることがあります。またペースメーカーがきちんと働いているか、機能が落ちていないか確認する必要があります。
ペースメーカー植込をしている患者を診療する必要があるときには、通読する本です。
ペースメーカー植込をしている患者を診ない場合には、読まなくてもいいでしょう。
こうやって見ると、杉山 裕章さんの本が多いですね。
不整脈についてもっと知りたいとき
不整脈の診かたと治療
著者:五十嵐 正男、山科 章
出版社:医学書院
ココがポイント
不整脈全般についてもっと知りたいときにはこの本!
辞書的に必要なところだけその都度利用しています
とても有名な本です。版が古くなってしまいましたが、今読んでも詳しく、わかりやすく書かれていてびっくりします。
不整脈全般について、もっと知りたい、興味がある方にはお勧めです。
通読するのではなく、辞書的に必要なところ、興味があるところをその都度調べる本です。
その他
その他にも最近はいろんな心電図の教科書や参考書が販売されています。
私がまだ知らない、とてもいい本はあると思います。同僚や先輩に聞いてみて、気に入った本があれば、その本を利用するのがいいかもしれません。
上で紹介した参考書は私が実際に使って、普通の12誘導心電図を読影するのにいい本です。
研修医のときに、ここで紹介した以外にも、例えばチャート式でわかりやすそうに買いてある参考書を買いましたが、結局ちんぷんかんぷんでした。
さいごに
心電図を普通に読むための本を紹介しました。
あくまでも心電図を短時間で機械的に読む本です。
実際の外来診療をしていると、たくさんの患者さんを短時間で診療するので、心電図検査結果に時間をかけることはできません。
今のうちに、心電図をぱっとみて、ぱっと判断するくらいにしておくと、自分の能力アップとともに時間の節約になりますよ。