心電図検査は、血液・尿検査、胸部X線検査と並んで、どの病院でも一般的に行うありふれた検査です。
どの科に進んでも、何らかの心電図検査をする機会があるでしょう。
でもよくわからないまま、なんとなく、検査結果をみていませんか?
12誘導心電図の検査をすると、ほとんどは心電図自動診断結果がついてきます。
もちろん、多くは正しい自動診断結果が記載されていますが、それを信頼するのも時として大間違いのときがあります。
でも、なかなかそれができない。
でも、どうにかしたいと思っている方は多いと思います。
この記事では、
心電図波形を読影したいけど、どうしたら自信を持って診断することができるの?どんな勉強の仕方をしたらいいの?心電図をみる機会は多いけど、よくわからない!
こんな方に、心電図読影を身につける方法をお伝えします。
毎週の病棟の心電図記録を集める
心電図記録は、入院時に一般的に行う検査なので、心電図検査結果が正常範囲かどうかを判断する必要があります。
そのため、正常範囲の心電図を正常範囲と診断するために、正常な心電図であっても、集めます。
必要なことは量です。
検査室の人を巻き込んでもいいかもしれません。
検査室の人も心電図に興味がある人がいるでしょうから。
検査室の人が心電図記録をとるため、集めるのはたやすいでしょう。
そうすると、自然に心電図が集まります。
それらを読影することで
普通に病院に来る方に、どんな心電図異常がどれくらいの頻度で起こるかわかります。
「この心電図はときどき見られる」
「この心電図は教科書ではよく見るけど、めったに見ないんだよね~」
などの実際の心電図の所見の頻度の感覚が身につきます。
心電図読影に自信がある指導医に依頼する
次に、心電図を自信をもって読影する人を探します。
循環器の先生がいいでしょう。
毎週の特定の曜日に30分だけでも、心電図を教えてもらう時間を確保してもらいます。
マンツーマンで心電図を教えてもらう時間です。
実際の進め方
毎週、病棟の心電図を集めます。
上にも書きましたが、半年で500枚程度。
その週に集めた心電図をまずは自分で読みます。
自分で読む段階では、心電図の教科書を読んでも構いません。
よくわからなければ、教科書から似たような心電図波形を見つけるというのでもいいと思います。
そして、自分なりの心電図所見を書いておく。
その答え合わせを上司と一緒に週1回30分程度行います。
マンツーマンで、
「この所見は〇〇だから必要」
「これは若い人にも見られる正常の所見」
「この所見がみられたときの意義(鑑別すべき疾患など)」
など、所見の正誤をチェックしてもらいながら、それに関係したコメントやその所見の理由・意義を教えてもらうと、心電図読影上の耳学問として、心電図読影の幅が広がります。
また、上司がどのようにして心電図所見を読影しているかという、上司の思考回路を学ぶことができます。
これを500人分くらい読むと、普通の心電図読影ができるようになります。
最初は全くと言ってわからず手探り状態ですが、これを繰り返すと、だんだん、診断能力が高くなり、読影時間も短くなります。
心電図を読影するときの参考書
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このシステムを構築する利点
このシステムを作ることは、
あなた自身が心電図の読影をするという自分の利益になります。
それとトレードオフというか、ギブアンドテイクという意味で病棟の心電図のダブルチェックを「短時間に!」循環器の医師と一緒にすることができます。
何しろ、例えば研修医にとっては心電図がわかるようになって興味を持てれば、循環器のグループに入る人も増えるでしょう。
また、もし循環器に入らなくても将来他の科で大したことない心電図所見で循環器紹介することも減るでしょう。
すると、あなた自身だけでなく、循環器の医師の利益にもなり、
病院の診療の質が高まることにつながるため、病院の利益にもなります。
私の場合
研修医の時に、同期のもう一人とその週にとった心電図を半分ずつに分けて、週1回、15分ほどずつ循環器の上司に指導してもらいました。
週20枚程度の読影を1年間続けました。
1枚1枚の心電図の読影に悩んで、時間をかけないようにすることがおすすめです。
上司にマンツーマンで採点してもらうときも、上司の時間も限られているので、1枚1枚に時間をかけないようにして、
足りない所見や、多すぎる所見を機械的に指摘してもらうといいですよ。
その他
心電図はパターン認識
心電図を読んだらすべてわかるわけではないので、あくまでも心電図「所見」として割り切って読影するのがコツです。
そのため、1枚1枚の心電図の読影に時間をかけないのがコツです。
もちろん、ある程度読めるようになって、わからないときに調べるのはありですが、はじめのうちはあくまでも機械的に読影するのがいいですよ。
瞬間的に判断する能力がつきます。
私と一緒に心電図を勉強した同期は、糖尿病専門医になりましたが、かなり心電図をきちんと読んでいました。
他の検査の読影にも応用可能
実は、当時は、他の科でもこのシステムを取り入れていて、
頭部や脊椎のMRI、CTにも参加していましたが、だんだん、所見を読むのが早くなりました。
私は参加していませんが、脳波も同じようなシステムがありました。
おまけ:心電図コード
心電図の自動診断には、番号がついてきます。
心電図の製造会社が各自のプログラムをもとにコードを作っており、そのコードをもとに心電図のコンピューターが心電図診断をしてきます。
ミネソタコード、日本光電のコード、フクダ電子のコードがあります。
複雑なコードのことが多いのですが、フクダ電子のコードはおおむね、自分で行う心電図読影の考え方に似ていました。
個人的にはフクダ電子のコードの所見がわかりやすいと思っています。
そのため、フクダ電子の3桁からなる心電図コードは覚えていたくらいです。
他の会社のコードには、昔使われていた所見がいまだに使われていたり、よくわからない所見やコメントがありますが、フクダ電子のコードは、非常にわかりやすい読影コメントをだしてくれます。
さいごに
心電図はパターン認識です。
6か月から1年間、計500枚以上の心電図読影を循環器医とともに答え合わせすると、普通の読影ができるようになります。
この方法は、自分自身のためになりますが、循環器内科医、さらには病院の役にも立つかもしれません。
その1年の経験は、循環器に進まなくても、その後に一生使える知識となって、とてもお得です!
自信がない方は、特に若い間に経験しておくことをお勧めします。
心電図を普通に読影する力が付きますよ!