病院で働くと、「はんこ」をよく使います。
いろんなタイプのはんこがありますが、どのはんこを使ってますか?
こだわりがある方もいれば、どのはんこでも押せばいいやくらいの気持ちのことも多いと思います。
普段よくはんこを使う場面
紙カルテの病院では、訂正印をよく使います。
でもカルテ記載の終わりに書くサインの代わりに印鑑を押すのは、適していないと言われることが多いです。
自筆でサインをするように言われます。
これは、印鑑は、誰でも押せるから、公文書としては、好ましくないからなのでしょうね。
また、電子カルテや紙カルテに関係なく、紙でやり取りする必要のある診断書、処方箋には印鑑を押します(自筆サインでも殆どは問題ないでしょう)。
これまであちこちの職場に行ってきました。
日本は印鑑の文化なのでしょう、こだわりがある職場がいくつかありました。
普通、こんな感じで署名捺印するとします。
ある職場では、自分の名前の右側に押印するにしても、少し左側に向いたように(少し反時計回転に)押印すると、お辞儀をしているように見えるため、「少し左に傾いて押したほうがより良いんだ!」という職場もありました。
また、自分の名前の最後の文字が半分隠れるように押印するように求められたこともありました。絶対ではありませんでしたが、偽造しにくくするための工夫のようで、文字に印鑑が一部重なっていると、偽造・複製しにくくなるそうです。
その他は、銀行では、皆さん経験があるかもしれませんが、銀行に出す書類については、実印であろうと無かろうと、印影がしっかりと分かるように押印するよう求められました。このあたりは銀行は厳格ですね。
きれいに印鑑ができていないと、やり直しでしたから。
【はんこの呼び方の違い】難しい:実印、認印、三文判、捺印、押印・・・
はんこについてはいくつも呼び方があります。
また、押印と捺印もあります。
どう違うのでしょうか。
記名押印(きめいおういん)と署名捺印(しょめいなついん)
「記名捺印」や「署名押印」とは言いませんね。
あくまでも記名押印か署名捺印という4文字がセットで使われることが多いです。
つまり、
記名=印刷された名前やゴム印
で、記名の後に印鑑を押すときには、「押印」
署名=自筆
で、署名の後に印鑑を押すときには、「捺印」
と呼ぶのが原則ですが、
職種によって、押印や捺印のどちらをどの場面で使うかが違うこともあるようです。
「郷に入りては郷に従へ」ですね。
でも、最近は混同して普通に使われます。
言葉は時代とともにその意味・意義が変わるものなので、意味が通じればいいと個人的には思いますし、自筆が必要なら、「自筆で記入すること」と注意書きしていればいいのではないかと思います。
印章、はんこと、印影、印鑑
もうこうなってきたら聞いたことがあるけれども、何がなにかわからなくなりますね。
まとめると、
印章=はんこ(判子)。木、象牙、石、プラスチック、金属などに名前を彫ったもの。
印影=印鑑。はんこを使って紙に残る朱肉のあと。
つまり、
印章、はんこは、印を押すのにつかう「モノ」
印影、印鑑は、そのはんこに朱肉をつけて紙などに残す朱肉の痕。
認印、実印、銀行印、三文判
認印: 三文判とも呼ぶ。普通に日常に使うはんこ。
実印: 役場に印鑑登録した印章。
銀行印: 銀行口座を開くときに届け出た印。
訂正印: 訂正する際に押す印。
実印は公に認定されている印鑑で、それ以外は特別な用途があれば、それに応じて印鑑に名前をつけて読んでいるだけでしょうか。
銀行で使えば、銀行印
文字を訂正するときに利用するのは、訂正印
特別な目的がなく日常生活で使用するのが認印や三文判
診療でつかうおすすめ「はんこ」
おすすめNo1:キャップレス9N XL-CLN5
その理由は、蓋を外したりはめたりという手間、朱肉をつけるという手間が要らず、はんこを紙に押し込むだけで捺印できることです。
手間が省けます。
自筆でサインしてもいいのですが、それはそれで疲れますから。
例えば、外来で30人診察するとすれば、30回自分の名前を書くのは、忍耐です。
「ポン!」と押印して処方箋を患者に渡すという方が簡単です。
それに、手も汚れないという利点。
はんこに朱肉をつけて・・・とすると、手が汚れます。
忙しい外来でこれが起きると嫌ですから。
更に、小型、軽いため、ポケットに入れておいても重さや大きさが気になりません。
価格も1000円未満(700円程度)で購入可能です。
いくつかの病棟や外来・検査室を行き来して診療すると思いますが、その中で万が一なくしたとしても、受ける精神的・金銭的ダメージがより少ないです。
欠点としては、印影の貫禄がないというか、いかにも浸透印!という感じがするところです。
印影にこだわりがあれば、「はん蔵」や普通の「はんこ」でしょうか。
おすすめNo2:はん蔵
普通のはんこをこのケースに収納しておけば、蓋をはめたり外したりせずに、紙に押し付けるだけで印鑑を押すことができるからです。
普通のはんこを、キャップレス9Nみたいに「紙に押し付けるだけ」で印鑑ができます。印影も、気に入ったはんこを使えるために、気に入ったものができます。
だったら、これのほうが、お気に入りのはんこも使うことができて良さそうですが、大きさが少しキャップレス9Nよりも大きくてかさばるのが欠点でしょうか。
以前のバージョンだと印面と反対側のプラスチックカバーが取れやすいというのも欠点でしたが今は改善されています。
普通のはんこ
ハンコケースに(この場合には印鑑ケースと呼ぶことが多いようですが)入れて持ち運ぶことになります。
その後に(はんこについた朱肉を拭き取って、)ケースに入れる。
という幾重にも手間がかかります。
日常業務ではデスクワークならはんこを出したままでも、いいのかもしれません。
でも、あちこちの職場や病棟に行って仕事をするときに、ハンコケースから取り出して、朱肉をつけて、押印して、再びハンコケースに収納するという手間が1日に何度となく繰り返されます。
そうすると、ちょっとした時間や手間の繰り返しですが、この繰り返しは時間をいずれ浪費してしまいます。
また、押印するよりももっと他のことに大事な時間を使いたい。
国家試験の診断書など、どうしても浸透印がダメな書類を記載する必要がまれにあるため、そんなときだけに使用するのがいいと思います。
格好はいいのですが・・・。
押印する、印鑑が納得行くものがいいという、最近の押印廃止の流れとは別の、この文化を好むときには、このはんこが一番いいのではないでしょうか。
ハンコ・ベンリ
はん蔵と同じように、はんこを中にセットして、押印するときには、紙に押し込むだけで押印できるというタイプ。
ベンリですが、私が使った限りでは、はん蔵に比べると、一回り大きく、印面がきれいにできませんでした。
それに押し込む動作が少し大きいために、ひと手間かかった気分になってしまいました。
最大の欠点は、朱肉部分が側面に引っかかってしまって押すことができないことがよくおこっために使わなくなりました。
大きさ、押し込む動作、私の場合には朱肉の部分が側面に引っかかって押すことができなくなったので、結局新しいのを買っても、数回使ってみただけになりました。
はんこの種類によってあう合わないというのがあるのかもしれません。
ネーム9N
これはよく見るはんこです。
日常に使うためには、捺印するときに、キャップを外して押す必要がある点、ポケットの中に入れておいて、蓋が万が一外れていたときには、白衣や服が赤く染まってしまうという欠点があり、持っていますが、普段は使っていません。
ネームエルツイン
胸ポケットに指しておくと、スマート感あります。
はんこの両端に印面がついていて、訂正印と普通のシャチハタ印がついています。
一方がスライド式に蓋を開けることができる。
もう一方は残念ながら、蓋。
格好は良いのですが、価格は3000円程度するため、なくしたときのダメージが大きいです。
それに、蓋がなんかの拍子で、ポケットの中で外れていると、白衣や服が赤く染まってしまうという欠点がきになります。
その他
ネームペンなどがありますが、結局、紛失したときのダメージ、キャップを外したりする手間を考えて、日常診療ではあまり使いません。
補充用インク
補充用インクの種類を間違えると、浸透印の目が詰まるのか、使えなくなります。
きちんと対応した補充用インクを使うべきですね。
おかげで私もいくつかの種類の補充用インクを買ってしまいました。
典型例としては、普通のシャチハタ印に朱肉用のインクを補充したことがありますが、大失敗でした。
一度失敗すると、補充用インクを垂らしても、それをはんこが吸収してくれなくなりました。
間違って補充することもあるため、この解決法としては、いくつか浸透印を購入するとき・保持するときには、できるだけはんこの会社を統一して購入しておくといいと思います。
さいごに
印鑑にこだわりがなければ、キャップレス9N がおすすめです。
「キャップレス9N」は軽い、小さい、有名なシャチハタ製で、安く、インクの補充も安いです。
もちろん、こだわりがあれば、多少の手間を惜しんでも好きなものを使った方が幸せです。
印鑑廃止という流れがあっても、どうしてもはんこを使う機会はまだまだ残ると思います。
時間を有効利用するために、手間が少なく、軽い、小さい、安いはんこを、割り切って使うのをお勧めします。