臨床研究データを解析するときには、周囲の人が使っている解析ソフトを使います。
SAS、STATA、R(EZR)、JMP、SPSSが代表的な解析ソフトでしょうか。
* ここでは、量的研究を扱います。
私が臨床研究を初めたときに、解析はSASを使って行う研究グループの方針でしたので、私は必然的にSASで解析をすることとなりました。
他の解析ソフトでは易しい参考書がたくさん売っていますが、SASはまだまだです。とっつきにくい。
SASで解析を初めたばかりで
- でも、プログラムの書き方がよくわからない。
- 解析結果をみてもどこを見たらいいかわからない。
- この解析結果はどのように考えたらいいの?
と悩んでいる方
あるいは、これからSASを使おうと思っている方。
そんなあなたに、私がSASを使い始めてある程度使うことができるようになるときに使った本をご紹介します。
私のような勉強の仕方と解析なら、2~3ヶ月使ってみればできるようになりますよ。
Contents
統計解析の基本を知る本
最初に私が通読した本でおすすめできるのは、
今日から使える 医療統計
著者:新谷 歩
医学書院
統計学の基本というか、考え方を知ることができます。
臨床研究についての統計の素人のわたしが最初に読んだ本です。
かつ、初心者でもわかりやすいように書いてあります。
それに、統計解析で間違えやすい概念・ポイントが解説されてあり、解析するときの注意点を知ることができます。
いろんな解析手法の基本を知る本
EZRでやさしく学ぶ統計学 改訂2版
~EBMの実践から臨床研究まで~
著者:神田 善伸
中外医学社
とてもいい本です。
Rという有名で無料の解析ソフトを使いやすく改良されたEZRがCD-ROMとしてついています。
EZR自体は無料でダウンロードして使うことができますが、
使いたい統計解析をEZRを使って行うときに、その実際のソフトの扱い方が書いてあるため、もしRやEZRを使おうとしている方にはとてもおすすめの本です。
私自身は、EZR自体はきれいなグラフをつくるときに利用しています。
この本のいいところは、そのソフトが付属している、あるいはその使い方が詳しく書いてあるところではなく、その統計解析手法を扱うときの基本知識が書いてあることだと思っています。
この基本知識は、教科書のようなもので、大切なポイントを、とても簡潔に書いてあります。
例えば、コックス比例ハザードモデル。
カプランマイヤー曲線で薬の効果の有無を比較するような論文をよく見かけます。
もし自分が同じような解析をするときには、その解析方法(例えば、コックス比例ハザードモデル)がどのようなものか、よく間違えやすい注意点は何かということを、この本でわかりやすく知ることができます。
そのため、私はこの本の基礎知識の部分を、解析をするときに読んで、その解析の特徴や注意点を確認するのによく利用しています。
私レベルの初心者にはその解析手法をしるために、必携の書です。
SASを使い始めるときに通読する本
SASを扱う前にあらかじめ通読しておく本です。
統計を知らない人のためのSAS入門 Ver.9.3対応版
著者:大橋渉
オーム社
簡単な、でも、よく使われる解析のSASをのプログラムを知ることができます。
かつ、読みやすく、通読しやすい本です。
初心者を超えたら読む必要はないかもしれません。
この本は、SASを使ってプログラムを書くハードルを下げてくれます。
SASを実際に使うときに参考にする本
良書です。
これも必ず持っておいたほうがいい本です。
なぜなら、実際の解析のプログラムと、その解析結果が書いてあるからです。
実際の解析(統計を知らない人のためのSAS入門から更に実践よりに進んだ解析)をするときにも、そのまま参考にしてプログラムを利用できます。
また、SASの解析をすると、解析結果がたくさん出てきます。
山のように。
その解析結果のどこを見たらいいかまで書いてあります。
統計解析について詳しく勉強すれば、どこを見たらいいかは必然的にわかってくるとは思いますが、生物統計家になるのでなければ、解析の実務上はそこまで知る必要はないのではないかと思っています。
そのため、結果のどこをみたらいいのかが書いてあるこの本とてもいい本です。
解析プログラムの例
実際の解析結果のみかた
が書いてあるので、今でも解析のときには、そばに置いて参照して利用しています。
わからないときに参照する本
統計解析ソフト「SAS」
著者:高浪洋平、舟尾暢男
カットシステム
これは、辞書的に使う本です。
これも持っておいたほうがいい本です。
解析方法についても記載されていますが、解析自体は、ほとんどは「実用SAS 統計ハンドブック」で大丈夫。
でもそれ以上の解析だったり、データを加工したりするときに利用します。
例えば、対象者の65歳以上を高齢者、65歳未満を若年者に分けて解析したいとき
BMIが25以上を肥満あり群、25未満を肥満なし群に分ける
eGFRを計算する
といったときに、どんな条件式を書いたらいいかや、四則演算の式の書き方など、統計解析するときに必要な、統計自体以外の部分の方法が書いてあって参考にしています。
その他
生物統計家(統計の専門家)を目指す場合
ここでご紹介してきたのは、あくまでも初心者が臨床データを使って解析できるようにするためのものです。
残念ながら私自身は、生物統計の専門を目指しているわけでは有りませんので、割り切って上にご紹介した本を参考にしています。
有名な本としては、
楽しい疫学: 疫学の基本が書いてあります
ハーバード大学講義テキスト 生物統計学 入門
生存時間解析 SASによる生物統計
生存時間解析 [応用編] SASによる生物統計
は基本で、良著として有名です。
私はそこまで時間と意欲がありませんし、生物統計家の道でご飯を食べるわけではないため、読んでません。
読んでなくても、解析して論文を書くことはできますよ。
やる気がある方には、とても評判がいい本です。
私が今でも参考にしている本
これ以上のことになると、ネット上の情報を見ながら、でも、SASを英語で説明しているページを見て解析を進めていくことになります。
英語を読むのに時間がかかるときには、DeepLなどを使って簡単に翻訳してみると、概要がつかめますのでそれほどハードルは高くありません。
さいごに
SASの本は、いろんな本が販売されていますがまだまだ、難しい本が多いです。
SASを扱う専門家が書いた本を読むとちんぷんかんぷんで、一部しかわからないので、本を買うコスト、それを苦労して読む時間を考えると、とても効率が悪いです。
今回ご紹介した本は、私の経験から、SAS解析を始める・始めたばかり・始めてもよくわからない人にはお勧めできます。
SASはデータの場合分け等の加工、プログラムや結果のみかたなど、とっつきにくい面が依然として多いです。
でも、それ以上に信頼性が高く、使い始めたら逆に使いやすと思っています。
一番大切なのは、解析すること以上に、データを集めて、解析結果を解釈して、世界の人たちに知らせることです。
今回ご紹介した本を利用して、みなさんの臨床研究結果を使って解析して、大事な結果をまとめてみてください。